October 14, 2005

ひらめく人を咲かせる組織~創造の目利きでヒットをとばせ!~

ひらめく人を咲かせる組織著者/片桐一郎 出版社/日本経済新聞社 発行年/2003 価格/1,680円

創造開発組織のあるべき姿を提示
 本書は、本来日本人は独創性があるはずなのに、そうした個人の独創性=ひらめきを組織化し、成果を出すシステムが確立されていないという、著者の問題意識のもとに書かれたものです。ここでいうシステムとは、独創性を発揮する「個人」、それをまとめる「リーダー」役、これらの人材をいかす「組織」インフラを要素とするものです。本書は、それぞれの要素について、創造開発組織において、あるべき姿をにまとめる形になっていて、それぞれ章ごとに著者のコンサルティング経験から得た具体的な手法も交えながら、論が進められています。

「戦略は人に従う」が基本
 その「組織」に関して、著者はひらめく人を咲かせる基本原則として、「三位一体の原則」を挙げています。これはアシモフの「組織は戦略に従う」といった従来型の発想から脱却し、GEのジャック・ウェルチのいう「戦略は人に従う」形に変えていくべきであるという主張です。つまり従来型の発想は、「戦略→組織→人」というような、まず戦略ありき、の形でしたが、これからの創造開発重視の時代は「戦略=組織=人」であり、旧態依然とした組織の論理に阻まれることなく、新規事業をやりたい人・やれる人に投資していくというように変えて行かなければならないということです。

スピード重視の経営改革を具体的に提示
 この原則が特に著者の主張の根幹になっているようで、最終章では、「戦略」「組織」「個人」を統合して、ひらめく組織へとまとめて変革(=進化)させていく方法を示しています。変革というと、まず「戦略」を見直し(場合によっては理念から練り直し)、次に「組織」を作り変え、さらに「個人」の意識改革というのが、教科書どおりの従来の典型的なやり方です。こうした順序だてたやり方は時間がかかり、コンサルティング会社にとって儲かる3点パックのようなものになるだけで、現在の事業環境の変化スピードには合わないものといえるでしょう。
 経営改革にはスピードが大事との指摘が、以前から当たり前のようにいわれていますが、その具体的方法というとIT利用や組織のフラット化に話が終始してしまいがちです。その点、本書は、スピード重視の経営改革とはどのようなものかということを、新たな視点で、なおかつ現実的な方法論で提示したものといえると思います。

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March 31, 2005

経営戦略の論理(第3版)

 経営戦略の論理
著者/伊丹敬之 出版社/日本経済新聞社 発行年/2003 価格/1,995円

新たな論点と事例を追加
 本書は1980年に初版、1984年に改訂版(第2版)が出された経営戦略分野のベストセラー的書籍で、2003年に第3版として新たに発行されたものです。内容的には基礎の部分を変えずに、事例を新しくし、さらに従来の内容を補完する新たな論点を一部追加してあります。追加された内容で、特に大きいのは「インターフェイス適合」についてで、第2版までは「戦略的適合」として「市場適合」と「内部適合」の2つを挙げていた部分に、その間を埋めるような位置づけで追記しています。


見えざる資産の中で組織風土が特に重要
 本書では「適合」ということを、戦略の内容が取り巻く要因とマッチしている状態ととらえ、上記の「市場適合」「インターフェイス適合」「内部適合」の3つに大きく分けて、論を進めています。その中でも著者が重視しているのは「内部適合」であり、そのキーワードとなるのが「見えざる資産」です(第2版では「見えざる資産のダイナミズム」という副題もつけられていました)。
 「見えざる資産」とは、技術開発力やノウハウ・ブランド・特許・組織風土など、本質的には情報といえるものを指し、これが競争優位や変化対応力の源泉となるものであるとしています。さらに著者は企業にとって、この見えざる資産をいかに蓄積し、有効利用していくかが戦略上の要件となることを指摘しています。
 特に注目すべきは、この「見えざる資産」の中でも、最重要なもののひとつとして「組織風土」を挙げていることです。当たり前のことといってしまえばそれまでですが、これまでこのblogで紹介してきた本の中だけをざっと考えても「名経営者が、なぜ失敗するか」でも根本的な問題とされていましたし、「経営戦略と組織革新」の中の根来氏のコンテクストの概念も、それに近い位置づけになると思われます。こうしてみると「組織風土」の重要性やその意義・意味の深さが、そのようなことからも改めて感じられます。

無形資産重視の先駆け
 本書で特に参考となるのは、「見えざる資産」を利用しつつ蓄積し、さらに将来の戦略にもいかしていくための指針が明示されている点です。著者は「ダイナミックシナジー」ということばを用いていますが、「見えざる資産」は利用することで、その活動がさらに新たな「見えざる資産」を生み、将来的に活用されるというしくみは、日常的な業務レベルから考えても納得のいくものだと思います。
 経営者の立場からすれば、これを恒常的に実現するような仕組みづくりが課題といえると思います。また最近は企業価値創造との関連で、ブランド力や知的ノウハウなど財務面に現れにくい無形資産をいかに顕在化し活用していくかが問われています。本書の主張は、これを(20年以上も前に!)先取りしたものと見ることもできると思います。
 なお本書を第3版として改訂するにあたって収集した多くのケースを、本書の内容に沿ってまとめたケースブックも出版されています。


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March 30, 2005

ロジカルシンキング

論理的な思考と構成のスキル

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル著者/照屋 華子 , 岡田 恵子 出版社/東洋経済新報社 発行年/2001 価格/2,310円

いかに論理的に伝えるか
 題名は「ロジカル・シンキング」ですが、内容的には前書きにもあるように「ロジカル・コミュニケーション」、すなわちいかに「伝える」か、ということに主眼を置いています。その意味では、類書の「考える技術・書く技術」とは主旨がやや異なるといえます。「考える技術・書く…」はどちらかというと論理的に「考える」ことが中心で、その成果としてわかりやすく「書く」ことを意図する内容に思われます。
 一方、本書はプレゼンをおこなう前や文章化する時などに、いかに相手に論理的に「伝える」かということを第一義としています。ただ、いずれも元をただせばマッキンゼー発のピラミッドストラクチャーや、それを支えるMECE、So What?/Why So?などをエッセンスとして論理構成の解説をしています。

マッキンゼー発のエッセンスが実践的に学べる
 「考える技術・書く…」はさらに帰納や演繹など論理にまつわる知識が詰め込まれているので、さほどページ数はなくても結構重いと感じる読者も少なくないのではないでしょうか。もちろん私の理解不足もありますが、読み物として捉えると、話の流れが少しだけ無理がある部分もあるように感じました。それに比べ本書は、相手に期待する反応をとってもらうために、どのような論理パターンで「伝える」べきかということの解説に終始しています。
 個人的には「考える技術・書く…」よりも本書のほうが、読みやすさ・理解のしやすさといった点で上回っていると思います(「考える技術・書く…」は邦訳の限界もあるのかもしれません。)。このようなことからベストセラー的存在の「考える技術・書く…」を読む前に、あるいは読後に、本書も一読すれば、かなり理解がしやすくなるのではないでしょうか。
 マッキンゼーのエッセンスを取り入れた書籍は他にもかなり多く出回っていますが、いわゆるピラミッドストラクチャーとその関連知識の解説に関していえば、私が数冊読んだ中でもっとも実践的でわかりやすく、同時に本質的な内容も落としていないように思えます。演習問題の質・量とも充実している点も評価できます。個人で読むだけでなく、社内研修・勉強会などでも活用されるとよいのではないかと思います。

いつから解かれた?門外不出
 なおこの本ではピラミッドストラクチャーという用語自体は使用されていません。MECE、So What?/Why So?を組み合わせた「論理の基本構造」として紹介され、それを展開していくつかの論理パターンとして解説しています。著者のお2人はマッキンゼーご出身ですが、敢えて使用しなかったのか、深い意味はないのかは、よくわかりません。
 そんな疑問を感じつつ、マッキンゼーに勤務経験がある先輩から聞いた話を思い出しました。今から10年くらい前のことですが、「MECEやSo What?/Why So?はマッキンゼー独自の方法論であり論理的思考のためのツールなので、社外に公表することはしない。」とのことでした。
 しかし1999年頃からだったと思いますが、一般書店に並ぶような本の中に、門外不出とまでは言わないまでも公表する類いのものではないはずの方法論が盛んに書かれるようになりました。論理思考ブームにのったマッキンゼーの方針転換なのか、そもそも先輩の話がガセネタだったのか、定かではありませんが、マッキンゼー発のMECE等がここ5年ほどでずいぶんポピュラーになったなあというのが率直な感想です。

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March 25, 2005

デフレに負けないマーケティング

14社の成功事例


デフレに負けないマーケティング―14社の成功事例著者/田中洋 出版社/ダイヤモンド社 発行年/2003 価格/1,680円

 
マーケティングの原点回帰を求める
 一部商品分野においてはデフレ脱却との指摘があるものの、まだまだ人々の財布のひもは固く、高い価値が見い出せないものにお金は払わないというスタンスに変わりはありません。今後景気が上向いても、かつてのようにモノが簡単に売れる時代はもう来ないと断定してもあまり異論はないでしょう。
 この本では、実際にデフレ時代でもしっかり利益を挙げ、その存在価値を高めてきた14社の事例紹介を中心にしています。その事例をとりあげる前提として、本書はマーケティングの基本スタンスを3つ(①セグメンテーション、②ブランディング、③デリバリー)提案しています。これらはマーケティングの基礎的な要素ですが、著者は、これまでの日本で実効性のある運用がなされてきたかどうか疑問であるとして、敢えてこの3つを最初に解説し、それに続くケース紹介につなげています。
 また結論部分の中でTIM(Total Integrated Marketing)、すなわちマーケティングをマーケティング部門だけのものと考えるのではなく、全社的な導きの糸となる哲学ととらえることを今後の要件としています。これも以前からあるコンセプトですが、ITの進展や、企業の拡張・拡大指向の終焉などを背景に、現在こそ実現可能で有効なものであると、著者は見ています。つまり本書では、いわばマーケティングの原点回帰的な発想を求めており、それこそがデフレに負けないマーケティングであるという主張が掴み取れます。

デフレ時代こそコトラー?
 確かにデフレであろうがインフレであろうが、マーケティングの本質とは普遍的なものであるはずですから、こうした指摘は当然と言えます。特にTIMについては、インターネットやそれにのるハード・ソフトの進展抜きでは実用レベルに届きませんから、やっと理念に現実が追いついてきたと考えてよいでしょう。
 こうしたことを考えているうちに、コトラーの著書をいくつか思い出しました。古くは「マーケティングマネジメント」(私が所有しているのは1996年の第7版)、最近では「市場戦略論」「マーケティング10の大罪」などです。今日現在、どこの大型書店にいってもビジネス書・経営書のコーナーではコトラーの著作が目に入ります。コトラーといえば言うまでもなくマーケティングの大家であり、コトラーの論説がそのままマーケティングの本質としてとらえられることも少なくないわけですから、こうしたデフレの時代に、しかも日本でも真のマーケティングを追求する環境が整ってきた中で、コトラーの著作が数多く出回るというのはもっともなことであり、歓迎すべきことなのかもしれません。
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March 16, 2005

名経営者が、なぜ失敗するのか?

著者/シドニー・フィンケルシュタイン 監訳/橋口 寛 出版社/日経BP社 出版年/2004
 名経営者が、なぜ失敗するのか?
あえて失敗にスポットを当てる
 この本はダートマス大学MBAコースで教鞭をとっている著者が、6年間に及ぶ調査・インタビューをおこなった成果をまとめたものです。著者によれば、かつては「エクセレントカンパニー」をはじめ、企業の成功を扱った文献がほとんどであり、本書はそれを補完する意味で失敗にスポットを当てたものと位置付けています。ここで取り上げられている企業数は51社に上り、これらの事例から共通した原因・理由を見い出すことを主旨としています。
 本書は大きくわけて3部構成になっていて、最初のPartⅠでは企業が失敗に直面する局面として、①新規事業の失敗、②イノベーションと変化への無為無策、③M&Aの矛盾、④戦略のミスの4つを挙げています。①ではゼネラルマジックやイリジウムなどを例に経営陣が暴走し所有と経営を混同したこと、②ではジョンソン&ジョンソンなどが過去の経験(成功や失敗)の呪縛を受けたことなどを指摘しています。さらに③の例ではクェーカーオーツやソニーを例に、M&Aによってシナジーを生み出し、売上増やコスト削減を図ることが実はかなり難しいことを数値で示し、その原因を探っています。そして④ではワング社や雪印乳業などが競争環境を読み間違えて、さらに片意地を張ったことなどを原因に挙げています。
 こうした失敗を防ぐにはどうすればよいか、著者は現状認識に問題があるとして、PartⅡでチェック事項を挙げています。例えば「魔法の解」(一つの原則や解)を信じ込んでいないか、あるいは誤った「評価基準」になっていないか、「狭い世界」の住人になっていないかなどを10項目を確認するべきであるとしています。そしてこれらを確認し、戦略を修正していくわけですが、常に「その認識はいつまで正しいか」も自問自答する必要があると主張しています。

「ゾンビ企業」とならないために
 では、こうした現状認識やその見直しがうまくおこなわれずに失敗が起きてしまうのはなぜなのか、その理由としてPartⅢで社風を挙げています。一見うまくいっているものの、実際は顧客の声が聞けず、悪いニュースにはフタをするという社風の企業を、ここでは「ゾンビ企業」とユニークな表現で呼んでいます。生ける屍状態といった意味になるのでしょうが、そうならないためには、自社の現状認識を変える必要があるほど重要な情報を尊重することが求められるが、失敗を犯す企業はそれを見落としているというのが著者の見方です。
 このあたりが本書で特に大きな失敗の原因とされている部分になりますが、その対策として経営陣が失敗回避に向けて情報機能が正しく働いているかを監視する必要があると著者は述べています。だからといって失敗回避のために将来を見抜くという不確実なことをするのではなく。未知の未来を管理していけるエネルギー・抵抗力・社風・才能を持つ組織作りこそ、トップが注力すべき事項であるというわけです。

失敗しそうな要素を抽出、活用できる 
 ここまで見ていくと「学習をする組織」というキーワードが頭に浮かんできます。その期待にたがわず(?)、本書の終わりのほうではこのことばにふれて、結論としてその実現には風通しのよさが必要と締めくくっています。このように通読していくと、内容的に特に目新しいものではありません。また失敗を切り口にする方法は、すでに日本では「失敗学」(東大名誉教授・畑村氏)として、ある程度ポピュラーになっています。そうした意味で、この本の効用 を考えると企業経営にまつわる失敗の原因・理由・対策について、過去に例がないほど多角的、網羅的に指摘したことにあると思います。
 ただしここに書いてあるような指摘をすべてチェックし、注意していたら企業運営が逆にスムーズに回らなくなり、本末転倒になってしまうはずです。ですので自社の失敗しそうな要素をこの本から抽出し戦略上・組織運営上でいかしていく、あるいは一度少しだけ立ち止まって自問自答するきっかけにしてみるといった使い方が現実的であり有効なのではないかと思われます。(例えばライブドア社長の堀江氏であれば、2005年3月現在大問題となっているM&Aに関して、この本の中のM&Aに関する記述を念のためチェックしてみるといった形?)

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March 15, 2005

サムスン電子

躍進する高収益企業の秘密

著者(編)/韓国経済新聞社 訳/福田恵介 出版社/東洋経済新報社 出版年/2002年

サムスン電子―躍進する高収益企業の秘密 
2002年の韓国紙連載がベース
 8、9年前にサムスン電子の現地中核工場で簡単な講演をおこなったことがあります。その時の思い出として、まず開始時刻が朝7時半と早いのに驚きました(サムスンの窓口担当者は前の晩に11時すぎまで残業だったそうですが、翌日は7時始業。これが毎日当たり前のようなことを言っていました。)。当日は若手~中堅社員中心に関係者が約100人ほど集まったのですが、ほとんどが日本語を理解できるので、スピーチは日本語でよいということにも驚きました。ただ、その当時はDRAMを安価に作るメーカーという印象が強く、今日のような世界的企業にまで躍進するとは思いませんでした。
 本書は韓国経済新聞の記者による執筆で、2002年に同新聞で掲載された連載がベースになっています。前書きにありますが、韓国では一企業を深く掘り下げた文献が作られた例はあまりなく、取材当初は難航を極めたそうです。それだけにこの連載の反響は大きく、海外有力マスコミからの問い合わせが殺到したとのことです。

日本の新聞ではつかめないトピックスを提供
 本書では、特に1997年の韓国金融危機を乗り越え、DRAM、携帯電話、LCDで世界屈指の企業となった背景について書かれています。サムスン電子がここまで成長した理由として、本書では、まず李会長(グループの総帥)のリーダーシップ、さらにそれに基づく準備(シナリオ)経営などが挙げられています。準備(シナリオ)経営というのは、経済状況を予測し経営していくということですが、これが生まれた発端はグループ内のホテルを会長が抜き打ちチェックし、不備を指摘した上で経営陣を交代させたことにあるそうです。これでサムスン電子をはじめグループ各社のトップに緊張が走り、常に深く考える習慣が根付いたそうです。
 こうしたエピソードのほか、よく言われる「選択と集中」の背景、また李会長とサムスン電子、さらにグループ全体を統括する構造調整本部のトライアングル体制など、日頃、日本の新聞・雑誌を読んでいるだけではなかなか詳しくつかめないトピックスがかなり盛り込まれています。他にもサムスン電子では事業ポートフォリオを、種・苗木・果樹・古木といった例えで考えていること、「選択と集中」の一方で提携と協力を極めて重視しソニーを純利益で大きく引き離したときでも「ソニーを刺激するな」という指示があったこと(ソニーとLCD事業提携の伏線?)などが紹介され、興味深い内容になっています。

サムスン?サムソン?三星?
 1997年頃から力を入れたブランド戦略についても書かれていますが、ここでは特にオリンピックを利用したマーケティングを強化した経緯が書かれています。そういえば私がサムスン電子を訪問した頃は「サムスン」ではなく「サムソン」とか漢字そのまま「三星(さんせい)」という呼び方が電機業界でも一般的だったと記憶しています。それがいつの間にか本来の「サムスン」で統一され定着しました。このような身近な事例からもサムスン電子が世界企業としてブランドを定着させていった経緯が理解できると思います。

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February 27, 2005

経営戦略と企業革新

経営システム工学ライブラリー

著者/小野桂之介、根来龍之 出版社/朝倉書店 発行年/2001 価格/2,800円

経営戦略と企業革新 オーソドックスなタイトルの経営書であり、著者の1人の根来氏のお名前は、以前に誌上MBA的な書物の先駆けと言える「日経ビジネスで学ぶ経営戦略の考え方」という本を読んだことなどで記憶にあったので、一見して内容的にも正統派タイプの経営戦略本という印象を受けました。ただ出版社が朝倉書店であり、同社の「経営システム工学ライブラリー」というシリーズの1巻であることなどから、もしかして数式や工学的表現が多用された理系寄り(?)の新しいタイプの基本書では?と身勝手に想像して興味を持ったのが、この本を手にしたきっかけです(実際は、ほぼタイトルどおりに経営戦略の基礎や環境変化の先取りによる企業革新などについて解説する内容になっています)。特に目を引いたのは、二人の著者がそれぞれに強く提唱している「ミッション経営」(小野氏)や、「コンテキスト」(根来氏)の概念を織り込みながら論を進めている点です。本書にコンパクトに書かれている内容を読むだけでも、それぞれの主張の明確な論拠がわかりやすく示されているので、かなり参考になりました。それぞれの考えは、一過性のものではなく、それを応用することで新たな枠組みの経営理論を見い出す可能性にもつながるものではないかと思います。例えば後者の「コンテキスト」については、一般的には「文脈」と解されますが、ここでは「人々の認知・認識や決定・行動を支えている構造的前提」としています。ビジネスモデルに関して言えば、その背後にあるコンテキストも意識しないと実効性のあるモデルは作れないということになります。このコンテキストについては、組織論における組織文化や企業パラダイムにも通ずるものだと思いますが、適用分野はかなり広いと言えます(根来氏は10年ほど前に一部マスコミでも話題にのぼった「ソフトシステムズ方法論」の訳者の一人であり、コンテキスト概念はソフトシステムズ方法論の要素である「世界観」などの流れを汲んだものなのだろうかと、ふとここで思いつきました)。ところで本書の属する「経営システム工学ライブラリー」シリーズは初学者向けの教科書的な位置づけで発行する意図があるようです。一般論として、ベーシックな教科書的位置づけの書物であっても専門性の高い内容のものほど、著者の理論的背景や主張が色濃く反映されます。本書もそのような傾向があり、初学者の方は、経営戦略のオーソドックスな概念を中心に記述した入門書も用意して併読すると、より理解が深まるのではないかと思われます。

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January 12, 2005

マーケティングゲーム

世界的優良企業に学ぶ勝つための原則

著者/エリックシュルツ 出版社/東洋経済新報社 発行年/2002 価格/2,310円

マーケティングゲーム―世界的優良企業に学ぶ勝つための原則 著者はP&G、コカコーラ、ウォルトディズニーといったマーケティング先進企業を渡り歩いた人物で、アトランタ五輪のキャンペーンをディレクションしたこともある人物です。そのマーケッターとして蓄積した経験から得た「競争に勝つための原則」を実例に基づいて紹介する形をとっています。「競争に勝つための原則」は、文中に要約した形でカコミ形式で明示され(かつての有名参考書”チャート式”のようなイメージ)、その数は60~70にのぼります。これだけ数が多いとすべてが科学的に実証されたものというわけではなく、「経験に基づく仮説集」あるいは「マーケティング担当の知恵袋」といった雰囲気です。かといって「マーケティング大家による教訓集」ではなく、実践的・実用的あるいは実務的な内容になっています。「原則」として書かれている内容としては、当たり前で周知のことが多く見受けられます。本文中から例示すると「流通戦略を策定する時は、チャネル・流通がブランドのイメージや価値を強化・補完することができるように、製品のブランドイメージに適合した流通を選択しなくてはならない」という記述があります。簡単に言えば、高級ブランド品は高級専門店で売り、ディスカウント店には安易に流すな、ということになると思いますが、このあたりは常識的にわかることです。本文の実例ではラルフローレンのポロが、その成功例として挙げられています。逆に失敗例を考えてみると、傘マークのアーノルドパーマーがあります。確か発売当初は高級ゴルフウェアであったものが、ハンカチや靴下その他諸々の商品にブランド供与し、総合スーパーなどでも広く販売した結果、いわゆるダサいブランドとして地に落ちてしまったように記憶しています(現在は低年齢層向けに復活)。このように簡単にその事例が思いつき、意味するところがわかりきっていると思われる原則が多く紹介されています。では、この本をマーケティングに詳しい人が読んでも意味がないかというと、そうではなく、むしろ「原則」を拾い読みしつつ、それぞれに該当する事例を思い描いていくと、かなりマーケティング脳の鍛錬になるのではないでしょうか。もし思い浮かばなければ本文中に事例が豊富に紹介されていますので、楽しめると思います。あるいは「原則」の中には新たな発見もあるかもしれません。さらにいままで何となく考えていたことが、はっきりとした短文で示されているかもしれません(おおげさに言いますと暗黙知が形式知に転換するかもしれません)。また初心者の方には、マーケティングの勘どころを事例を通して知ることができる良書と言えるでしょう。なおタイトルに「ゲーム」とありますが、これはここではマーケティングでの「勝負」「競争」といった程度の意味と思われます。「ゲーム」理論、ビジネス「ゲーム」の類ではありません。ご参考まで。
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December 22, 2004

仕組み革新の時代

新しいマーケティングパラダイムを求めて

編者/嶋口充輝 出版社/有斐閣 発行年/2004 価格/2,205円

仕組み革新の時代―新しいマーケティング・パラダイムを求めて 顧客価値創造のためには昔も今も「仕組み」づくりが重要という視点を前提として、ケースの観察によって仮説的発見をすることを基本的なスタンスに置いて構成されています。事例の選択基準としては、事業目的(顧客の創造・維持)をいかに達成しているかの程度を「効果(=顧客満足等で示される)」と、手段の生産性の高さを「効率(=利益等で示される)」とし、その両面で優れたものを選んでいます。事例を紹介・解説する際には、「効果」にウェイトを置いたものと、「効率」にウェイトを置いたものに分けて、さらに近年の「IT型仕組み革新」に該当するものを加える形を取っています。「効果」の事例としては、青梅慶友病院・エスシステム、鎌倉市、「効率」では大塚家具・パーク24など、さらにITではe-Bay、デルが取り上げられています。ビジネスにおける「仕組み」はすべてビジネスモデルとして捉えられることが多い昨今ですが、元々ビジネスモデルとは、ビジネスモデル特許に代表されるようにITが絡んだものを指すわけです。この本ではビジネスモデルということばを前面に出してはいませんが、一部記述やe-Bayが取り上げられていることなどからも、上記の「IT型仕組み革新」が本来のビジネスモデルに該当することがわかります。その意味では「仕組み」という古くて新しい(?)パラダイムによって、やや食傷気味のビジネスモデル論と一線を画した捉え方をしていると言えるでしょう。なお本書で扱っている事例は、8名が分担執筆したものです。その執筆人がかなり豪華です。本書と同じ有斐閣刊の『コンビニエンス・ストア業態の革新』.(このダイジェスト的内容が本書でも使われています)という意欲作を出されている金顕哲氏ら研究者に加え、ボストンコンサルティング(BCG)の内田和成氏(現シニアヴァイスプレジデント)、ブーズ・アレン・ハミルトンの岸本義之氏(現ヴァイスプレジデント)といったコンサルティング界の重鎮も名を連ねています。このあたり、編者のKBS=慶応ビジネススクールにおける研究室がいかに優れた人材を輩出しているかがわかります。

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December 11, 2004

発想法入門(新版)

発想法入門著者/星野匡 出版社/日本経済新聞社 発行年/1997 価格/872円

特にビジネスの発想法と謳っているわけではありませんが、著者の企業研修の経験などに基づいて書かれているので、結果的にはビジネス現場での活用が目的になっています。またブレーンストーミングをはじめとするグループでの集団発想法を特に多く取り上げています。商品企画、事業企画など、発想法がいかせるビジネスシーンは多種多様にありますが、この本ではどういう時にどんな発想法を使えばよいか、ということまでは明確に示していません。その代わりコンパクトな文庫サイズの割には、かなり多くの発想法が紹介されています(約40)。著者は、その中から自分たちに合ったものを少しずつ試してみることを勧めています。そして発想法の「基本が身に付いたら、応用は我が身に合ったようにやればいい」としています。既存の発想法をマニュアル化し、フォーマットにあてはめていくことでアイデア出しをする方法を説く類書もありますが、ビジネスシーンにはケースバイケースの与件や環境があり、既成フォーマットにすっきり合うとは限りません。そういった意味で、本書のようにより多くの方法の紹介にこだわることは意味のあることだと言えます。その中からいくつか実施してみて、自分たちに合うものを選び、さらにカスタマイズしていくというプロセスになりますが、こういうやり方のほうが遠回りのようでも現実的なのではないかと思います。
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