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March 16, 2005

名経営者が、なぜ失敗するのか?

著者/シドニー・フィンケルシュタイン 監訳/橋口 寛 出版社/日経BP社 出版年/2004
 名経営者が、なぜ失敗するのか?
あえて失敗にスポットを当てる
 この本はダートマス大学MBAコースで教鞭をとっている著者が、6年間に及ぶ調査・インタビューをおこなった成果をまとめたものです。著者によれば、かつては「エクセレントカンパニー」をはじめ、企業の成功を扱った文献がほとんどであり、本書はそれを補完する意味で失敗にスポットを当てたものと位置付けています。ここで取り上げられている企業数は51社に上り、これらの事例から共通した原因・理由を見い出すことを主旨としています。
 本書は大きくわけて3部構成になっていて、最初のPartⅠでは企業が失敗に直面する局面として、①新規事業の失敗、②イノベーションと変化への無為無策、③M&Aの矛盾、④戦略のミスの4つを挙げています。①ではゼネラルマジックやイリジウムなどを例に経営陣が暴走し所有と経営を混同したこと、②ではジョンソン&ジョンソンなどが過去の経験(成功や失敗)の呪縛を受けたことなどを指摘しています。さらに③の例ではクェーカーオーツやソニーを例に、M&Aによってシナジーを生み出し、売上増やコスト削減を図ることが実はかなり難しいことを数値で示し、その原因を探っています。そして④ではワング社や雪印乳業などが競争環境を読み間違えて、さらに片意地を張ったことなどを原因に挙げています。
 こうした失敗を防ぐにはどうすればよいか、著者は現状認識に問題があるとして、PartⅡでチェック事項を挙げています。例えば「魔法の解」(一つの原則や解)を信じ込んでいないか、あるいは誤った「評価基準」になっていないか、「狭い世界」の住人になっていないかなどを10項目を確認するべきであるとしています。そしてこれらを確認し、戦略を修正していくわけですが、常に「その認識はいつまで正しいか」も自問自答する必要があると主張しています。

「ゾンビ企業」とならないために
 では、こうした現状認識やその見直しがうまくおこなわれずに失敗が起きてしまうのはなぜなのか、その理由としてPartⅢで社風を挙げています。一見うまくいっているものの、実際は顧客の声が聞けず、悪いニュースにはフタをするという社風の企業を、ここでは「ゾンビ企業」とユニークな表現で呼んでいます。生ける屍状態といった意味になるのでしょうが、そうならないためには、自社の現状認識を変える必要があるほど重要な情報を尊重することが求められるが、失敗を犯す企業はそれを見落としているというのが著者の見方です。
 このあたりが本書で特に大きな失敗の原因とされている部分になりますが、その対策として経営陣が失敗回避に向けて情報機能が正しく働いているかを監視する必要があると著者は述べています。だからといって失敗回避のために将来を見抜くという不確実なことをするのではなく。未知の未来を管理していけるエネルギー・抵抗力・社風・才能を持つ組織作りこそ、トップが注力すべき事項であるというわけです。

失敗しそうな要素を抽出、活用できる 
 ここまで見ていくと「学習をする組織」というキーワードが頭に浮かんできます。その期待にたがわず(?)、本書の終わりのほうではこのことばにふれて、結論としてその実現には風通しのよさが必要と締めくくっています。このように通読していくと、内容的に特に目新しいものではありません。また失敗を切り口にする方法は、すでに日本では「失敗学」(東大名誉教授・畑村氏)として、ある程度ポピュラーになっています。そうした意味で、この本の効用 を考えると企業経営にまつわる失敗の原因・理由・対策について、過去に例がないほど多角的、網羅的に指摘したことにあると思います。
 ただしここに書いてあるような指摘をすべてチェックし、注意していたら企業運営が逆にスムーズに回らなくなり、本末転倒になってしまうはずです。ですので自社の失敗しそうな要素をこの本から抽出し戦略上・組織運営上でいかしていく、あるいは一度少しだけ立ち止まって自問自答するきっかけにしてみるといった使い方が現実的であり有効なのではないかと思われます。(例えばライブドア社長の堀江氏であれば、2005年3月現在大問題となっているM&Aに関して、この本の中のM&Aに関する記述を念のためチェックしてみるといった形?)

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